「アジャイルサムライー達人開発者への道」を読んで
新しい開発チームに変わり、会社の大先輩のシステム開発手法のバイブルになっているとオススメされた本書。アジャイル開発の言葉や定義は理解していたものの、本質をあまり理解できていなかったので、お盆休みに手に取って読んでみたので感想も含めて備忘録として残しておく。
- 本のタイトル:アジャイルサムライー達人開発者への道
- 著書:Jonathan Rasmusson
- 要約
- Manifesto for Agile Software Development(アジャイルソフトウェア開発宣言)
- 期待をマネジメントせよ
- 3つの真実を受け入れよ
- 「選択と集中」で的を絞る
- 感想・まとめ
- 書籍情報
要約
アジャイル開発で期待される成果を出すための秘訣として、方法論やツールを導入するだけではなく、考え方の規範となる「Manifesto for Agile Software Development(アジャイルソフトウェア開発宣言)」のマインドセットや原則を網羅的にわかりやすく説明してくれる。アジャイル開発は万能な方法論ではないが、マインドセットを胸に顧客を含めたONE TEAMでソフトウェア開発に情熱を注ぐことが大切と諭してくれる。
Manifesto for Agile Software Development(アジャイルソフトウェア開発宣言)
引用元:アジャイルソフトウェア開発宣言
左記に価値があることを認めながらも、もっと右記に焦点を当てる。とても大事な考え方だと思えた。左記はもちろん欠かせないし、エンジニアが自ら焦点を当てる部分であろう。だからこそ、右記にこそ焦点を当てるべきであるというのはすごく納得できた。個人的に咀嚼して、以下に焦点を当てていきたいと思う。
- コミュニケーションによる相互理解でONE TEAMに。
- 技術の進歩やサーバレス環境などPoC等での実証実験が手軽になった現代。ドキュメント上での仮説検証ではなく、実社会での実証実験によるフィードバックでPDCAを回す。
- 顧客と一緒に最高のソフトウェア開発ができるよう、Win-Winな関係構築を。
- 技術や市場の変化は脅威的な速さである、変化を受け入れ、より良い成果を掴み取れ。
期待をマネジメントせよ
ソフトウェア開発プロジェクトでは、チーム内外にさまざまな期待が存在する。しかも、そうした期待には明示的な期待と暗示的な期待がある。 ー p6 ー
プロジェクトマネージャー(PM)の仕事はまさに「各方面の期待をマネジメントすること」であると最近思うようになった。明示的な期待は調整がしやすいものの、暗示的な期待が本当に難しい。暗示的な期待を理解するためには、本気で相手の立場に自らが立つ必要がある。客観的に俯瞰することも大事であるが、本当に自分が相手の立場であれば、どうしたいのか、どうすべきなのか考えを巡らせる必要がある。そうでもしない限り、真の意味での暗示的な期待に応えることはできないと思う。反対にそうすることで初めて信頼貯金を増やすことができ、顧客とも信頼関係が構築できるものだと思う。
本書では、現場現物主義や、顧客からの仕様変更への対応スタンス、チームビルディング手法など、様々な手法を提示してくれた。
3つの真実を受け入れよ
3つの真実
- プロジェクトの開始時点に全ての要求を集めることはできない
- 要求とは発見されるものである。
- 集めたところで、要求はどれも必ずといっていいほど変わる
- 変化は起きるもの。起きた変化を受け入れること。
- やるべきことはいつでも、与えられた時間と資金よりも多い
- やれることをやるだけ。優先順位を付け、高いものからこなしていく。 ー p13 ー
要求とは、人の中にある、目標達成や問題解決をするためにありたい姿であり、主観的で曖昧なものである。曖昧なために、正しく伝わりにくく、時と場合により変化しやすい。そのため、正確な記述が困難であり、抜け漏れが発生し、管理がしにくいものである。
これは以前一時期話題になった、ITビジネスにおける多難なシステム開発プロジェクトの姿を風刺した絵である。
要約すると、顧客が期待した通りのシステムが完成しなかった原因は、開発側の勝手な思い込みや都合の押し付けだではなく、そもそも「最初に顧客が説明した要件からしてズレていた」、ということを表している。
そのため、上記に戻るが、期待をマネジメントしながら、要求という主観的な曖昧なものを受け入れ、咀嚼して、要件という客観的に落とし込む必要がある。それには顧客と開発側の双方の歩み寄りが不可欠である。
そして、要求は変わりやすいものである。実際にやってみないとわからないは大いにある。わからないからこそ、やってみるという部分もある。だからこそ、やってみてダメであれば、即座に方向転換し、プロジェクトを進むべき方向に舵取りできるチームでありたい。
要求は膨らみやすく、あれも、これもと追加したくなる。ただし、時間も予算も有限のものである。だからこそ、きちんと本質を見極めて、優先順位をつける必要がある。焦る必要はない。ただし、本当に解決したい問題は何か、その問題の本質を見誤らないように、刻一刻と変わる現在の状況を直視しつつ、判断をする必要がある。
「選択と集中」で的を絞る
ソフトウェアの64%の機能は、ほとんどあるいは全く使われていない。(システムの価値の80%がシステムの機能の20%からもたらされている。)このことからも、まずは本当に重要なことだけに集中すべきである。 ー p158 ー
ソフトウェア開発において、つい便利にしたくて、様々な機能を実装したくなってしまう。「この機能あったら便利だよね」と。ただし、それは本当に必要か?と今一度考える必要がある。実際に64%の機能は、殆どあるいは全く使われていないという事実をしっかりと心に留めておけば、余計な機能ではなく、システムの価値に注力できるはずである。
様々なシステムで溢れている現代。他社と比較して、あれもこれもと機能として「あるべきである」という固定概念もあると思う。だからこそ、本当に必要な機能か、このシステムに不可欠であるかは、今一度立ち返る必要があるように思えた。
感想・まとめ
タイトルである「アジャイルサムライ」って何?正直、最初は半信半疑で本書を手に取った。ただ、実際に読んでみて非常にステキな本であった。
アジャイル、イテレーション、TDDなどキーワードのみで理解をしていた自分が浅はかだった。本書を読むことで、改めてアジャイルの素晴らしさを知ることができた。顧客と深い関わりを持ち、顧客の期待をマネジメントしながら、ONE TEAMで大きな成果をあげていけるように、これからも精進していきたい。
先輩がバイブルであるという意味が理解できたし、オススメしてくれた先輩に感謝の意を述べたい。
この本は数ヶ月後に、また読み直してみたいと思えた。きっとまた新しい発見があると思う。そして、要求を要件に落とし込む手法、期待のマネジメント方法などに関して、他にも書籍を読んでみたいと思えた。何かオススメの本があれば教えてもえると大変嬉しい。